社団法人日本耳鼻咽喉科学会東京都地方部会例会
第4回臨床学習セミナー


*会場地図の案内につきましては、第164回学術講演会プログラムをご参照下さい。


挨  拶(2:00− 2:05) 枝松 秀雄(東邦大学第 1 耳鼻咽喉科)

臨床学習セミナー

  1. 特殊な中耳・内耳の病変に行う手術 湯浅 貴文(東邦大学第 2 耳鼻科)
      通常の耳科手術の大半は、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎の手術であり手術治療の決定や行われるべき手術手技に関してはほぼ定型的で判断に迷うことは少ない。しかしながら稀ではあるが、病変の診断が困難で治療法や手術に踏み切る時期の選定などに苦慮する耳科疾患を経験することがある。著者らが今までに経験したこれらの特殊と思われる中耳や内耳病変への対応法と、手術治療を行った 3 症例の治療経過について報告する。
  2. 内視鏡下鼻内手術における合併症(出血、頭蓋内合併症、眼窩内合併症)の回避と 出現時の処置法について
    柳   清(聖路加国際病院)
      内視鏡下鼻内副鼻腔手術において合併症を回避するためには前方に立ちはだかる隔壁が篩骨蜂巣なのか、蝶形骨洞の前壁なのか、頭蓋底なのか、眼窩内側壁なのかを判断することが重要である。そのために目印になる指標を定め、方向と深さを確認し、隔壁の開放を進めて行く。また隔壁を開放する手術手技においても後方に位置する臓器を傷つけないように決まった手順で行う。実際の出血や髄液漏出現時の処置についてもビデオで供覧する。
  3. 診断と治療法の選択に苦慮した咽頭・喉頭疾患
    江口 智徳(獨協医大越谷病院)
      耳鼻科の日常診療の現場で対応しなければならない咽頭や喉頭の病変は、異常感症から悪性腫瘍まで多種多様である。診断の基本は、内視鏡検査による局所の観察であり、ファイバースコープ検査は耳鼻科医の専門手技である。治療で重要なのは、呼吸障害への対応であり、気管切開の適応決定を遅らせて致命的な気道閉塞を招いてはいけない。著者らが今までに経験した、咽頭・喉頭疾患のなかでも診断と治療法の選択が困難であった稀な症例を報告し問題点を考察する。
  4. 東邦大学の新しい電子カルテシステム
    村松 弘明(東邦大学第 1 耳鼻科)
      東邦大学大森病院では、現在 1 日平均2,800名以上の外来受診患者様と約1,000名の入院患者様も、すべて電子カルテシステム上で病状の記録、診察のための予約・検査のオーダー、紹介先への返信や診断書作成などが行われている。このシステムは全国約20の医科大学に導入されている。電子カルテの長所と問題点などを報告し、電子カルテがなぜ今多くの病院施設で導入され始めているのかを考察する。

――― 休   憩 (3:45− 4:00)―――

    臨床学習セミナー

    教育講演 1( 4:00− 4:50)
    司会:大越 俊夫(東邦大学第 2 耳鼻科)
    医師の診療行為における法的責任について
    ―医療過誤と医師免許取り消し・停止処分を中心に― 高橋 茂樹(弁護士・医学博士)
      医療過誤を起こした医師は民事上では患者から損害賠償を求められる。ただし、患者側で医師の過失と因果関係を立証しなければならないので、患者側の勝訴率は高くない。また、訴訟に先行して証拠保全手続が行われることが多いのも特徴である。行政上の責任としては医師免許停止等の処分を受けることがある。従来は刑事事件で有罪となった場合に限って処分されてきたが、近年になって、厚生労働省は民事訴訟の敗訴も処分の対象とする旨公表している。

    教育講演 2( 5:00− 6:00)
    司会:小田  恂(東邦大学名誉教授)
    医療改革と耳鼻咽喉科の将来
    小松崎 篤(東京医科歯科大学名誉教授)
      医療改革の基本がどんなものであるか、それが現在までにどのような形で進んできたかを考えてみたい。このことは耳鼻咽喉科の将来を考える上で重要であり、それは大学病院、総合病院の医療、診療所における医療に影響を与えるからである。
      医療保険制度改革の主目的は、医療の質や医療の経済性を効率良くするということ、また、効率の良い医療の提供、給付の平等性や負担の公平さということがよく言われている。しかし、実際の主なる目的は当然のことながら医療費削減以外の何物でもない。このような外枠の基本的なスタンスの中で、耳鼻咽喉科の医療がどのように進んでいくかということは、今後にとって大きな問題点を残すことになる。